「萌えデジ」発売

手前味噌な話題でなんだが、『萌えからはじまるデジタルライフ』が本日発売された。

萌えからはじまるデジタルライフ―こうなっていたんだ!?デジタルグッズ&家電編

萌えからはじまるデジタルライフ―こうなっていたんだ!?デジタルグッズ&家電編

今日はこれを企画するまでの経緯について書いてみよう。


ドラえもん」の未来デパート

直接の発想のきっかけになったのは『ドラえもん』に登場する未来デパート。あの、時々机のタイムマシンから配達員が届けにくる、ドラえもんひみつ道具の入手先と思われるアレである。未来デパートの商品は今考えると胡散臭いものばかりで、人口問題に直面していながら人間製造機を売り出したり、他にもどう考えても犯罪目的としか考えられないような道具、欠陥品だらけである。
とはいえ、現代の科学水準をはるかに超えた便利な道具の数々。『ドラえもん』が面白かったのは、ドラえもん自身が何でもできる特殊能力者じゃなくて、あくまで23世紀の科学、道具によってもたらされた珍騒動だったからだと思う。道具ゆえに使用方法、使用目的におのずと限界が見えるし、何より使う人間の能力、良識が大きく左右される。のび太がラストで大抵しっぺ返しを食らうのはまさにこの部分で、ドラえもんの「道具を使うのは結局人間だからね」という発言にすべて集約されていると思う。


21世紀デパートへようこそ

あ、いや。別に『ドラえもん』の批評をするつもりは毛頭ないのだが、ここで思ったことは

現在の商品も、過去の人間から見たら十分ひみつ道具なんじゃないの?

という点である。
プラズマTVや携帯電話、各種エンタテインメントロボット……考えてみれば23世紀どころかほんの20〜30年前では到底考えられなかったシロモノばかりである。現代では当たり前のように使われているこれらデジタル製品(本書ではデジ物と呼称)だが、我々はその自分たちが使っているもののことをどれだけ知っているのだろう? 目に見えて動作原理が容易に想像できる一昔前の「機械」とは違って、デジ物はほとんどが集積回路のカタマリである。原理も仕組みもわからない道具は、まさに「ひみつ道具」なのだ。
未来デパートとまでは言わないが、20〜30年前の人間から見れば現代の製品群はまさに「21世紀デパート」と呼んでも差し支えないのではないだろうか。


何故「萌え」にこだわるのか

発売時期からも、その流れからも『もえたん*1と比較されることは十分に予想される。実際、何の影響も受けていないといえば嘘になるだろう。『もえたん』がもたらした新しい市場への挑戦は賞賛されるべきである。
もともと、この手の「デジ物を扱った本を作りたい」という意思はずっとあったものの、この手の本の読者層の設定はなかなか難しい。先ほど「ひみつ道具」と呼称したが、電子工学系の技術書を手に取るレベルの御仁ならおそらく先刻ご承知だろう。かといって、それ以外の方々に手にとってもらえる本を作るならば、視覚的なヤワラカさは必須である。『もえたん』はおそらく萌え絵の活用方法として英単語帳を選んだのではと個人的には推測しているが、本書では「萌え」絵で媚びようとしたというよりは、必然的にこうなったといった感じだ。


この本のメイン読者層はまさに「デジ物を特に意識せずに使っている方々」なのだが、もっと突っ込んで言うなら中高生である。フリガナこそふってはいないが、知的好奇心を持った小学生にも読んで欲しいと思っている。
私はまさに学研の「ひみつシリーズ*2で育った世代なのだが、今の世代の「ひみつシリーズ」たりえるポジションになりたいと思うし、内容面についても吟味したつもりだ。
もちろん、イラスト目的で買われる理系の大きなおともだちも忘れてはいない。コンセプトの都合上、なるべく広く浅くという方向性だが、1単元読んで10前後は「これは知らなかった」と言わせられるよう配慮している。それでも、「目新しい情報はなかった」といわれる御仁は……スンマセン。それはさすがに、専門書を読んでいただきたい。


もえたん』以来、さまざまな出版社から「萌え」をキーワードにしたさまざまなテーマの本が発売されている。が、よく見てみるとそれらは対象とする読者層もコンセプトも実に多様なのがわかるはずだ。「2匹目のドジョウ」と揶揄される意見も十分想像できるが、それぞれを読み比べて分析みるとこれはこれで面白いテーマだと私は思うのだがどうだろう?

*1:三才ブックス・刊。「萌える英単語」というまったく新しいコンセプトで、英単語帳としては異例の14万部を超える売り上げを記録した

*2:1970年代後半から80年代にかけて発売された学習漫画のパイオニア。30歳前後の御仁なら一度は手にしたことがあるのでは?