続・美少女ゲームと性犯罪

hiropapa02005-07-27


昨日に触れたカスパルの提案に関する話題だが、ネットで検索をしてみるとこんなものが見つかった。


ギャルゲドットコム即時閉鎖の申し入れ書


あいも変わらずというか、「社会における道義的責任〜閉鎖すれば会社は発展する」という昨日の文面とまったく同じ論旨、論理展開である。ただし、こちらの方は統計資料がリンクされていたため、これを読み解きながら検証してみよう。


性犯罪の増加の原因は児童ポルノ法の施行?

平成15年上半期の犯罪情勢警察庁

確かに、この資料では認知件数が増加しているが、これがそもそも出版物やビデオ等とどのように関連しているのだろうか? 例えば、特に認知件数が増えたといわれる平成11年以降に出版やビデオ業界、美少女ゲーム業界に何か節目はあったのか? 犯罪件数とリンクする情報があって、初めて発言に根拠が現れるのではないだろうか。
私が知る限りの平成11年(1999年)に起きた大きなトピックといえば……上記の申し入れ書にも触れている「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」、いわゆる通称「児童ポルノ法」の施行である。新しい法律の施行に伴って、今まで犯罪として該当しなかったものが犯罪になる、こういった流れは決して珍しいものではない。

割と最近の身近な例としては「改正道路交通法」がある。平成16年の改正で一番の焦点は、運転中の携帯電話の使用が禁止されたという点である。改正道路交通法の施行後3か月の状況によると、平成16年11月から翌年1月までの3ヶ月で携帯電話等使用等禁止違反により55236件が検挙されている。それまでは違反ではなかった行為が法律により違法となるだけで統計上の犯罪数が跳ね上がる……そんなひとつの例といえるだろう。


せっかく先方が客観的資料を提示しているのだから、こちらも敬意を表して最新の統計資料を提示したい。初出はカスパル同様に警察庁によるものだ。

強姦(平成16年犯罪統計資料)警察庁
強制わいせつ(平成16年犯罪統計資料)警察庁

ギャルゲドットコムに申し入れ書を送った時点ではおそらくこの統計は公開されていなかったので、含まれていなくても仕方がないとは思うが、平成16年度では強姦、強制わいせつともに認知件数が大幅に減少している。この事実を持って、カスパルはどのようなコメントをするのか大変興味深い。


ちなみに、カスパルが上記文面中で主張するヘアヌードに関しては、初めてヘアヌードグラビアを載せたのは1992年の「宝島」(宝島社・刊)誌上。つまり、この主張は単なる思い込みと主観であり、まったく関連性も根拠もないということも付け加えておく。


「平等」を声高に叫ぶヤツほど差別をする

さて、図らずも二日連続になってしまったこの話題だが、ずっと考えていて一つの思考にたどり着いたことがある。それは、カスパルの主張から感じ取れることは「人間の本質はみんな清廉潔白でいい人」という人間性善説に基づいているのでは?という点だ。
別にそれを否定するつもりはない。が、人間みな十人十色。いいヤツもいれば悪いヤツもいる。性衝動に関してだって、人によって考え方はまちまちなのに、なぜ一様にポルノメディアを根絶することで問題が解決できるという考えに行き着くのだろう?
児童ポルノ法も含めて、法律というものはそもそも「悪事を働いた人間に罰則を与える」という人間性悪説に基づいた概念だ。人間がそんな聖人君子だらけだったら、彼らが言う法規制というもの自体、ハナから不要なのではないか?と私は思う。

性欲というのは、言うまでもなく睡眠欲、食欲と並ぶ人間の三大欲求である。よく「性欲をスポーツで健全に発散させろ」なんて言ったりするが、「スポーツで眠気や食欲を発散させろ」なんて言葉は聞いたことがない。私自身は、性倫理の観点からいってセックスフリーに関しては賛同しかねるし、ある一定の制限、ルールは必要だと思う。が、人間は性衝動があってこそ種の保存が成立しているのだ。去勢すれば性犯罪が減るなんてのはあまりに短絡的な思考ではないか。
食欲は食べることで満たすことが出来る。睡眠欲は寝ることで満たすことが出来る。では、性欲は特定のパートナーがいない状態ではどうやって満たせばよいのだろう? 根絶した後に明らかに残される問題点について解決の提示も出来ない、理想論だけで現実から目をそむけた方々。明確な回答があるならば答えてもらいたい。

最後に、文化・宗教・人種・世代を超えて分け隔てなく平等な社会を目指すというのならば、ポルノメディアに従事する人、愛好する人に対しても同様の立場で同じように接するべきなのではないだろうか? 一方的に性嗜好や倫理観の違いで規制を企てる。これが、カスパルが言うところの「平等」なのだろうか?